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はじめに
「企画編」に続き、今回は「撮影」の部分を掘り下げてご説明していきます。
撮影という行程は、機材を用意するのはもちろんですが、
台本やロケスケジュールを入念に確認し、撮影当日の仕切りや、
カメラの構図などをしっかりとイメージできていないと失敗します。
直前の準備作業や、当日の撮影方法など、どのように行い、何に注意すればよいのか。いくつかポイントを紹介します。
その①前日までに準備するもの
どのような動画を企画をしたのかによって若干変わってきますが、
基本的には
・カメラ
・三脚
・照明
・マイク
・台本(企画時に作成したもの)
・ロケスケジュール(企画時に作成したもの)
が必要となります。
カメラは家庭用のビデオカメラ(フルHD撮影が可能なもの)でも問題ありませんが、
家庭用のビデオカメラの場合、相当な上位機種でなければ細かい設定をすることができません。
細かい設定やレンズの種類で、こだわりの映像を楽しみたい方は、デジタル一眼レフカメラで動画を撮ることをオススメします。
設定方法については後述します。
最近では「デジイチムービー」などと呼ばれ、レンズ交換ができる強みを活かした高画質動画を撮影することができます。
動画撮影に向いているデジタル一眼レフカメラをいくつかご紹介します。


Panasonic LUMIX DMC-GH2 Panasonic LUMIX DMC-GH3


SONY NEX-VG30H SONY NEX-VG900
今回パナソニックとソニーのみの紹介にしたのは、現在の動画制作ではスタンダードになっている、
AVCHDという規格で記録できるのがこの2社のカメラだからです。
もちろんキャノンやニコンでも動画撮影はできるのですが、少し融通がきかない部分が多く
(動画は10分以内しか連続撮影ができないなど)、「動画撮影をする」前提であれば、上記の4機種がオススメです。
PanasonicのGHシリーズは、動画に特化した一眼レフカメラです。
GH2は2010年に発売されたものなので型としては古いですが、非常に動画撮影に関しては優秀なので今でも人気があります。
GH3はその後継機種で、2012年に発売されました。バランスや使い勝手が大きく向上しています。
2013年4月現在の価格は、GH2がレンズキット付きで9万円前後、GH3が標準ズームレンズキット付きで17万円前後となっています。
SONYのNEX-VGシリーズは一眼レフカメラではありませんが、SONYのEマウントシリーズのレンズを付け替えることのできるビデオカメラです。
ビデオカメラベースでレンズの付け替えができるのは、このVGシリーズのみなので現状では唯一無二の存在です。
特にVG900は35mmのフルサイズCMOSセンサーを搭載し、いままでのビデオカメラとは比べ物にならない表現力を備えています。
2013年4月現在の価格は、VG30H(レンズキット込み)が20万円前後、VG900(本体のみ)が27万円前後となっています。
音声や動画撮影のしやすさを考えると個人的にはこの製品が一番「いいとこどり」な機種だと思います。
三脚はある程度しっかりしたものが良いですが、定点撮影(カメラを固定し、決まった一点を撮影する)がメインの場合、
SLIKなどのメーカーの3,000円程度のものでも問題ありません。(実際私も3,000円の三脚を使用しています)

SLIK Fシリーズ F741
照明は室内や、暗い場所での撮影をする場合は用意しましょう。カメラや三脚に取り付けることのできる照明も多く、
最近ではかなり安く手に入れることができます。LEDを使用した照明が熱くならず、電力も抑えめでオススメです。
マイクは、インタビューなど人の声をしっかり収録したい場合にはピンマイクや
ガンマイクが必要になります。元々カメラについているマイクは広い範囲の音を拾うように設計されているため、
周囲の雑音など不要な音も拾ってしまう場合があります。
なので、ピンマイクやガンマイクなどの単一指向性(ピンポイントで拾いたい音を拾える)のものを別に用意できると
様々な場面に対応することができます。
これらに加え、ICレコーダーも用意すると音を単独で収録できますし、
いざという時のバックアップとしても使えるので便利です。


SONYガンマイクECM-CG1 audio-technicaピンマイク AT9904
台本、ロケスケジュールは「企画編」でご説明しましたが、必ず作成し、
前日までには頭の中で撮影当日の流れをイメージしておきましょう。
その②当日の流れ
撮影の基本の流れとしては、セッティング→カメラテスト→リハーサル→本番となります。
・セッティング
カメラを現場の状況に合わせ調整します。
記録方式、ホワイトバランス、シャッタースピード、ゲイン、絞りをしっかり設定しましょう。
カメラの細かい設定に関しては、「撮影時のカメラ設定」(5月公開予定のコラム)
でご紹介しますのでそちらをご覧ください。
・カメラテスト
本番と同じ場所で、カメラやマイク、被写体の配置やカメラワーク等をチェックします。
ここでは、モノを撮影する場合はダミー、人物の場合はスタッフなど代役で行います。
あくまでカメラや照明、マイクなどのポジションを決めることが目的になります。
・リハーサル
被写体を現物、本人に入れ替え、まったく本番と同じ内容で練習撮影します。
撮影が正しくできるか、音声が正しく録音されているか、本番と同じ条件でテストして、
初めて気づけるミスや不具合などがある可能性がありますので、円滑な本番撮影を進めるために必要となります。
・本番
ここまできてようやく本番です。それでもミスやアクシデントは起こるものです。
臨機応変に対応できるよう機材の予備や台本の予備案など、できるかぎりの準備をして臨みましょう。
その③撮影後
撮影が終了したら、必ず、その場で素材がきちんと記録されているか確認しましょう。
画がちゃんと撮れていたとしても、音声が風の音で聞こえないなどはよくあることです。
そんな場合でも、解散する前に気づけば、再度、声だけ収録したり、差し替え用の映像を撮影することもできます。
これだけの時間と労力を使って「撮れてませんでした」では済まないでしょうから、充分にチェックしましょう。
まとめ
「企画した作品に合った機材の準備」と「撮影の流れ」をしっかりと把握し、
撮影当日も漏れのないように意識して行動することで、失敗を防ぐことができます。
撮影がうまくできることで、編集による手間を減らして、高いクオリティの映像が作れます。
ここまでで紹介したポイントは「ここまでしなくても…」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
作品の善し悪しを決める工程だからこそ、ここまでするのです。
「ちゃんとした動画制作がしたい人」は是非、実践してみてください。